朝。いや、朝と言っていいのだろうか・・・まだあたりは少し暗く、日も昇りきっていない。
他の家では皆寝ているだろうが、一つの家の中では輝かしい夜明けとは裏腹に叫び声が聞こえてきた。
「おい！つばめおきろ！夜明けだ。下界へ行くぞ！」
叫び声の元はイスカらしい。つばめは目をこすりながら、重そうな体を上げ、イスカに呟く。
「あれ？此処何処？」
寝言なのか独り言なのかわからないが、イスカは少し、怒った様だ。
「寝惚けるなつばめ！下界へ行くんだろ!」
キーンと鳴りそうな叫び声をイスカはつばめに上げ、つばめは耳を少し塞ぎながら、「そこまで叫ば無くても聞こえてるよ！」イスカに言い返す。つばめの反論も空しく、すずめが割って入る。
「はい。下らない争いは此処まで。ゲートまで行くわよ」
すずめの一番まともな意見に少し言葉につまり、すずめの言うとおりに従った。つばめはまだ、眠そうな顔をしていたが、ゲートに着く前には収まっていた。夜明けにゲートに着く予定だったが、言い争いと身支度で結構時間を食ってしまった。
あたりはもう、日が出て少し霞がかった綺麗な朝だ。つばめを先頭にして三人の天使と悪魔は歩き出す。彼女等はゲートに着くと兵士に一礼をし、兵士はつばめたちをまたあの青い魔方陣へと連れて行った。
「じゃあ、気をつけてな・・・」
兵士がそういったのを最後につばめたちは煌くような魔方陣の光と共にワープした。
あて先が知らないのが不安だったが・・・・一瞬辺りが光った後、つばめ達は天界の下、下界の上空へとワープしていた。下界の広々とした姿に少し感嘆の叫びを上げる三人。
「わぁーすごい！」
最初に言葉を発したのはすずめ。しばらくした後に今度はイスカが声を上げる。
「へん。案外小さいな下界っつーもんは」
少し余裕そうに不敵に声を上げる。だが、つばめは二人とは違い、驚きの顔でも、不敵な笑みでもない。何かを思い出したようにつばめは声を上げる。
「あ・・・！」
その言葉に真っ先に反応したのはイスカ。
「どうした？何か忘れ物か？」
つばめの驚愕した表情を伺いながらイスカは聞いた。
「そういえばセキレイ様が、下界に行くと魔力が不足して長時間飛べなくなるって言ってた」
つばめの言葉に少し二人は首を傾げる。
しかし、一瞬の混乱が去ると、彼等の顔が青くなる。
「ということは・・・・？」
「私達は落ちるって事よ〜〜〜！」
すずめの言葉に一瞬で状況を理解するイスカ。そして、すずめの言葉の後に三人の落下速度が急激に上がる。それに、高度も結構ある。
「キャァァァァァアア！」
「うわぁぁぁぁぁぁ！」
ドスン！！
鈍い音を立てながら三人は下界へと着地した。幸いな事に落ちた場所は浜辺だったため、重傷は避けられた。もしも、硬い地面だったら・・・・・
「死ぬかと思った・・・」
すずめが弱弱しい言葉を上げる。その後で、彼等はついた場所を確認する。
周りを見たところでは・・・・巨大な城に、城下町のように賑やかな町。
規模は結構あり、人口もそこそこあった。色の基本は赤と白。
「凄い〜」
「下界の王都か？ 賑やかなところだぜ」
すずめが感嘆の声を出し、イスカがついた場所を確認するかのような声を上げる。
「とりあえず、此処で情報を集めてみようよ」
つばめの言葉に他の二人は賛成し、浜辺から出て、城下町へと歩いて行った。 |
